株主・投資家の皆様へ

当社の第19期事業年度は、EVに対する各国の補助金の打ち切りや高金利などにより、EV需要拡大が減速しました。また、民生需要についても、世界各国での紛争などリスクの顕在化によって需要が低迷したことで、電池生産量が抑えられ在庫調整が進みました。その結果、当社のセパレータについても出荷量は計画値を下回り、販売価格も下落傾向となりました。この状況は、世界での紛争やアメリカ大統領選挙など政治的不透明感が継続する今年においても、回復が待たれる状況となっております。

一方、中長期的な電池需要は、着実に増加していくことが想定されています。そのため、当社では成長が鈍化しているこの時期に足踏みするのではなく、需要停滞期であるチャンスであると捉え、次のステップへの飛躍のために、事業規模の拡大に備えるとともに、製品競争力の強化に対応することが重要であると考えています。事業規模の拡大については、顧客の地域展開に対応した生産拠点の設置と新規顧客の開拓に取り組んでまいります。また、製品競争力の強化については、昨年から中規模成膜ラインの生産能力を2倍に増やす新生産技術の導入に取り組み、今後は新規の大型成膜ライン及びハンガリー工場の大型成膜ラインに展開していきます。また、人件費の削減や一層の品質安定化のために、生産プロセスの自動化促進による製品競争力の強化にも取り組んでまいります。

また、昨年から新規事業として、イオン交換膜のスタックモジュールの製造を開始しました。イオン交換膜は、当社がリチウムイオン二次電池用セパレータの生産で培った技術を応用して開発したものです。当社がこのイオン交換膜を利用して製造したスタックモジュールは、塩湖・鹹水からリチウムを析出する設備の一部として利用されることとなります。2024年2月から顧客のアルゼンチン工場に向けて出荷を開始しました。今後は、この技術を応用して様々な用途での販売を行っていく計画であり、生産量増加に備えて、製造設備の設置を進めています。

設立当初、資本力のない企業が成功することは難しいとされていたセパレータの分野で、事業規模を拡大し続けてまいりました。また、昨年からは新たな事業をスタートさせることができました。そして、この度、第20期事業年度を迎えられることができることは、ひとえに皆様のご支援の賜物であり、役職員一同、心より感謝申し上げます。株主の皆様に対して、必ず当社の成長を実感していただけるよう、これからも事業に邁進していく所存です。今後とも、一層のご支援のほど何卒よろしくお願い申し上げます。

ダブル・スコープ株式会社
代表取締役社長 崔 元根